2018年の8月9日に出た第三四半期の決算では、
売上は1280億円4400万円で、去年のこの時期と比べると11%の増収。
さらに営業利益も89億1800万円で13%の増収とスシローの業績は調子がよさそうです。
ということで、児湯の議題は以下の通りです。
増収を続けるスシローの不安要素とは?
スシローの立ち位置を確認
まずはスシローの飲食業界における立ち位置を確認しましょう。下のグラフを見てください。飲食業界を売上高順に並べたものになります。(2017年の有価証券報告書を基に作成)
スシローは売上高で言うと6位に位置します。1564億200万円ですね。
2018年の第3四半期の決算(売上高1280億円4400万円)を単純に4分の3倍してみると、1707億円になるので、今期も特に順位の大きな変動はなさそうです。
では、回転寿司業界に絞って売上高を比べた場合、スシローはどの順位に位置するでしょう。
「4強」における順位は?
「スシロー」「くら寿司」「はま寿司」「かっぱ寿司」の4強で比べてみましょう。
下の図です。
ご覧の取り、スシローは回転寿司業界では1位に位置します。2位がはま寿司で3位がくら寿司です。
ただ、独走、というわけではないようですね。
最近では、はま寿司が急速に店舗数を拡大しているので、スシローは気を抜けませんね。
では、スシローの立ち位置を確認したところで次の論点に移りましょう。
財務基盤が軟弱?スシローと比較する
次は、スシローの財務基盤を確認してみましょう。財務基盤を確認するにあたって、「くら寿司」の財務基盤と比較します。
同じ業界でどこに違いが出てくるかを見てみましょう。
下の図を見てください。
スシローの財務基盤を見て特徴的な部分は以下の3つです。
- 固定資産が多い
- 固定負債が多い
- 資本回転率が小さい
損益計算書には大きな違いは見受けられませんね。
では、まずはスシローの損益計算書に注目してみましょう。
スシローの損益計算書の特徴は?
スシローの売上原価は48%です。飲食業界の売上原価は30%ほどが理想的なところ、スシローは「売上原価50%程度」と言って食品の質を求めています。
ただ、、くら寿司も同じくらいの原価率があるようですね。46%です。差別化するのが大変そうですね。
販管費の内訳の多くが「従業員給付費用」ですね。
飲食業界にはFLコストというものがあります。
FLコストはF(food)とL(labor)を合わせたコストのことで、理想としては60%以内が目安です。
スシローの場合はこれが77%あるので、もう少し削りたいところですね。
営業利益率は6%と、ほかの食料業界と比べると高い値となっています。
回転寿司は基本的に寿司を回すのに機械を使って人件費を抑えやすい業界なのでこのようなことが起きるのです。
では、次は貸借対照表を見てみましょう。
スシローの貸借対照表の特徴は?
下の図を見てください。貸借対照表とその内訳です。
特徴としては、
- 固定資産が多い
- 固定負債が多い
- 資本回転率が小さい
でしたね。
なぜ財務基盤が軟弱だといえるのか?
固定資産の中身は、無形固定資産とのれんがほとんどを占めていますね。そして負債に目を移すと、有利子負債が多くを占めています。
これらのことから有利子負債を抱えて企業を買収したことがわかるのですが、これこそが懸念要素なのです。
のれんや無形固定資産には「減損」というものがあります。
スシローの場合は、定期償却が必要ないIFRS(国際会計基準)に基づく会計なので、都度減損の基準に達しているかをチェックします。
その基準は「将来も今と同じだけの収益が見込めるか」です。
この基準に達していなければ、のれんや無形固定資産は「減損」され資産から費用に代わってしまいます。
つまり、のれんや無形固定資産が資産でいるためには、安定した収益を出し続けなくてはいけないのです。
逆に言うと、収益が見込めなくなった途端、減損が始まり費用が増大してバタバタと崩れてしまう可能性があるのです。
こうなった場合、もともと多い有利子負債の返済にも追われ、流動資産も少ないので返せるお金も手元にはありません。
最悪の状況を考えてみると、本当に最悪ですね。
スシローの将来はどうなる?
意外ですが、スシローは現在のところ海外展開も遅れています。
日本の外食業界の市場規模はどんどんと小さくなっていくでしょうから、海外展開は早めに策を打ちたいところです。
財務基盤が悪いといざというときに立ち直ることができません。どうやってこの財務基盤を健全なものにできるのか、今後も目が離せない企業ですね。
P.S.
これでスシローの企業分析を終わります。
ツイッターでも日々企業の分析をしているのでぜひフォローしてください。
参考サイト・資料