マクドナルドのV字回復の要因を決算情報で徹底分析!本当に低価格路線をやめたのか?

企業分析

 

 

マクドナルドに関するニュースで印象的なのは、2015年の期限切れの鶏肉を使用していたニュースですね。

もともとマックは「原価を削って安い質の良くない商品を提供している」イメージがあったので、やっぱりか、と思ってしまいましたが、実際にこのニュースはマクドナルドの業績に直接影響してしまいました。

多くの人は、マックは「低価格路線をやめて業績を回復」したト思っていると思います。

しかし、それは、半分正解で半分間違いです!

児湯はそのことについて解説していきたいと思います!

マクドナルドのV字回復の要因はなに?

マクドナルドのV字回復とは?

では、そもそものマクドナルドのV字回復を確認していきましょう。下のグラフを見てください。

2015年に、大きな赤字を経験しています。これが期限切れ鶏肉使用問題の影響です。もろに業績に影響していますね。

しかしその後の2016年以降、売上高、営業利益ともに急上昇しています。これがV字回復と言われる所以です。

2017年には2536億4000万円の売上高を達成し、2013年あたりの業績にまで上昇しました。

店舗数の推移は?

では、次に店舗数の推移を見ていきましょう。下の図です。

店舗数の推移を見てわかるように、こちらは年々減少していますね。2015年以降には3000店舗を下回っています。特徴的なのは、直営店の比率がどんどんと減っていることです。

では、「売上高」「店舗数」の2つのデータから「店舗ごとの売上高」を計算できるので、確認してみましょう。

店舗ごとの売上高は?

計算式は、売上高÷店舗数になりますね。その結果が以下の図です。

当然ですが、2015年以降は「売上高」が増え「店舗数」が減っているので「店舗ごとの売上高」は急上昇しています。

では、マクドナルドのV字回復の要因はなに?の本題に入っていきます!

マクドナルドの業績回復の式は?

まず、マクドナルドはなにをすれば売上高が上がるのかを確認しましょう。下の式を見てください。

つまり、「客数」と「客単価」を増やすことで「売上高」が増えるのです。

「低価格路線をやめる」ということは、「客単価」を上げるということですよね。ということで、まずは「客単価」の推移を見ていきましょう。

マクドナルドの「低価格路線をやめる」を検証!

「客単価」に注目します。マクドナルドのHPに客単価の前年比の成長率が載っていたので見てみましょう。

マクドナルドの客単価の推移は?

2007年の客単価を100%として、それとの上下関係を表す数字になります。

2015年以降を見てみると、上昇傾向にありますね。つまり、「低価格路線をやめる」方針はある程度間違いでなかったことがわかります。

では、なぜ客単価が上昇傾向にあるのか。

それは、おいしい商品を高い値段で売っているからですよね。マクドナルドのメニューの一部を見てみると、多くのセットメニューは500円では買えません。今までのマックではセットが500円以内で買えたことを考えると、客単価を上げようとしているのは目に見えますね。

マクドナルドは客数も伸ばしている?

マクドナルドの売上高の式のうち、「客数」に注目しましょう。マクドナルドのHPに客数の推移のデータが載っていたので見てみます。下の図です。

客数の推移は?

先ほどの「客単価」を確認した時と同じように、「客数」も2015年以降上昇傾向にありますね。

つまり、「売上高」の回復には「客単価」とともに「客数」の上昇も同じだけ貢献しているということになります。

では、なぜ「客数」が上昇したのかを考察してみましょう。

客数が増えた原因はなに?

決算情報を見ていて、2015年以降に急激に変わった数字がありました。「リモデル店」の急増です。「リモデル店」とは改装店舗のことですね。

実際に下のグラフを見てください。

2015年以降、リモデル店舗数はそれ以前の3、4倍ありますね。

それに対して、新規出店はどんどんと減っています。

つまり、新規出店を抑えながらも、リモデル店舗の数を加速させることで既存店の活性化を目指しているのです。

ここに客数を増やす戦略が見えます。

客数を増やすためのほかの戦略

客数を増やすためにはほかにも様々なことを行っています。具体的には以下の3つです。

「QSC」「店舗体験」「マーケティング」

QSC」は、Qがクオリティー、Sがサービス、Cがクリンリネスを表します。

店舗体験」は、先ほど見た「リモデル店舗」の増加ですね。

マーケティング」ではツイッターを主に活用しているようです。これらの3つの戦略を使って客数の増加を目指しているのです。

売上高が伸びた原因

以上の議論で、マクドナルドの売上高が伸びた原因がわかりましたね。

ちまたで言われている「客単価」の上昇のみではありませんでした。売上高の要因は、

リモデル店舗を増加することや商品の値段をあげることで「客数」「客単価」どちらも上がっている

が正しい表現になります。

ただ、売上高が会社の利益になるわけではありませんね。

そこからかかる費用を考えなくてはいけません。次は「営業利益」を検証してみましょう。

マクドナルドの営業利益の式は?

営業利益は、売上高から「売上原価」「販管費」を引いたものになります。

つまり、営業利益を上げるためには「売上高」を上げることはもちろんのこと、「売上原価」「販管費」も小さくしなくてはいけないのです。

では、費用に注目して話を進めましょう。

マクドナルドは費用をどれだけかけている?

まずは今期(2017年)の損益計算書を見てみましょう。

売上原価がほとんどの費用を占めていますね。これはイメージとは全く違うのではないでしょうか。

しかし、売上原価の内訳を見てください。通常の小売業とは違って製造業のように「直接労務費」や「直接その他の原価」などの項目が売上原価に含まれています。実際の商品の売上原価はこれらを引いたら小さくなりますね。

では次は費用の内訳を時間軸で見ていきましょう。

費用の内訳はどのように変わっている?

下のグラフは費用の内訳を2007年から2016年まで記したものになります。

どんどんと減っていますね。一番変化が大きいのは「直接材料費」でしょうか。

また、「広告宣伝費」の割合も小さくなっていますね。景気が悪いときは「広告宣伝費」はすぐに削ることのできる費用なので、2015年までの業績の悪化が顕著ですね。

では、これらの費用が売上高のどれだけを占めるのかを示す「営業利益率」を見てみましょう。

営業利益率の変化は?

下の図が営業利益率を表しています。

完璧なV字回復ですね。

2015年以降は、「売上高」を伸ばすだけでなく費用を削ることで「営業利益」も伸ばすことができていると言うことができます。

では、最後に今後のマックの業績を考える点で重要になる指標を確認しましょう。

今後重要になってくる指標は何?

マクドナルドは、以上の議論で確認してきたように、

  • 新規出店を抑えてリモデル店舗を活性化させる
  • 「客数」「客単価」を上げることで「売上高」を伸ばす

ことに注力していることがわかります。これらがしっかりと成功しているかを確認する指標が、「資本回転率」です。

資本回転率とは?

資本回転率の式は以下の式です。

つまり、資産からどれだけの売上高を出せているかを表す指標です。

マクドナルドは、店舗を増やさないで店舗語との売上高を上げようとしているわけです。

なので、うまくいけば「売上高」が上昇し、「総資産」は特に増えることがないので「資本回転率」は上昇しますよね。

ここを見るとマクドナルドの戦略がうまくいっているのかいっていないのかが簡単にわかります。

ちなみに、今の資本回転率は下の図の通りです。

マクドナルドの資本回転率

1.3倍は、飲食業界の中ではそこまで高い値ではないので、これを上げられるかどうか今後に期待ですね。

まとめ

マクドナルドのV字回復は、

「客数」「客単価」ともに上昇し、費用の割合も減っている完璧な経営方針

によるものでした。

それにしても、今日見たどのグラフにも言えることなのですが、「2015年の期限切れ鶏肉の事件

この事件の前からだんだんと業績は悪くなっていますよね。

つまり、2015年の事件は偶発的な事故ではなく、業績の悪化がもたらした必然的な事故であったと言うことができるかもしれません。

今後のマクドナルドに期待です。

P.S.

これでマクドナルドの企業分析を終わります。

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参考サイト・資料

マクドナルドホームページ有価証券報告書データシート決算説明会資料

 

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