今日は、就活生に大人気の航空業界のトップ2、ANA(全日本空輸)とJAL(日本空港)の違いを徹底解明していきます。何かと比べられることの多いこの2社、果たしてどちらが「良い企業」なのか、様々な観点から違いを比較していきます。
もくじをクリックして、自分の見たい観点から読み進めてもよいかと思います。
では、さっそく比較に入っていきましょう。
歴史の違い
まずは、歴史の違いから見ていきましょう。
JAL
JALは、正式には日本空港株式会社です。東京都品川区に本社があります。
- 1951年に前身の企業が設立されました。2002年には他社との合併をし、2005年には「ワンワールド」という国際的な航空連合に加盟しました。この波に乗って日本の航空業界を斡旋するかと思いきや、、
- 2010年1月19日、会社更生法を申請するとともに、倒産します。そしてそのすぐ同2月1日、新たな会社として再スタートです。
- 2011年3月には会社更生期間を終え、民間企業に復活しました。ここで日本航空株式会社と商号を変更します。
- 2012年には再び上場し、そこからの類まれなる企業努力で、今日のJALにまで成長したのです。
ANA
ANAは、正式には全日本空輸株式会社です。東京都港区に本社があります。
- 1952年、GHQによる航空規制の解除ととも日本ヘリコプター輸送株式会社と極東航空株式会社が設立されました。
- 1958年、この2社は運輸省の方針により国内航空輸送を一本化する為に合併しました。「全日空」の誕生です。
- 1958年、旅客機の事故により、2億円を超える損失を経験します。ここで、全日空はJALとの業務提携を組みます。
- 2001年に、アメリカ同時多発テロの影響を受けて、経営が困難になり、政府から無利子融資を受けます。経営再建のスタートです。
- 2003年には「ANA」に社名を変更して、イメージの転換を図ります。
- 2012年に事業会社の名前を「全日本空輸」に変更します。
ANAもJALも経験している経営不振
どちらの会社も、経営不振を乗り越えた歴史がありますね。
航空業界は、国内外の変化にもろに影響されます。これからも安定するとは言い難いですが、どちらも危機を乗り越えた経験のある強い会社なので、これからの成長にも期待ができますね。
サービスの違い
では、次にサービスの違いを見ていきましょう。
JAL
JALは、国際線に強みを持っています。
さらに、経営破綻後の企業努力により、顧客満足度やロイヤリティは国際航空部門で1位となっています。
また、マイナーな国内空港にも飛行機が飛んでいるので、乗客の利便性を第一に考えている気がしますね。
ANA
ANAは、国内線とアジアなどの近距離路線に強みを持っています。最近では国際線にも力を入れ始めました。
理念の違い
次に、理念の違いを見ていきましょう。この理念の違いがサービスの違いに出てくるかもしれません。
JAL
JALのホームページを見てみましょう。
JALグループは、全社員の物心両面の幸福を追求し、
- お客さまに最高のサービスを提供します
- 企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献します
とあります。ここで特徴的なのは、全社員の物心両面と言っているところですね。
お客様への充実したサービスの提供には、まずは社員の幸せから、と考えているようです。
ANA
次は、ANAのホームページを見てみましょう。
ANAグループは、「安心」と「信頼」を基礎に
- 価値ある時間と空間を創造します。
- いつも身近な存在であり続けます。
- 世界の人々に「夢」と「感動」を届けます。
とあります。ANAは社員に対して言及はしていませんが、お客様に対する「安心」「信頼」に重きを置いています。
これは、以前起きた旅客機の事故やアメリカ同時多発テロなどの影響なのでしょうか。
売上の違い
では、次は売上・利益の違いです。各社の決算資料からデータを持ってきました。
売上高の推移
下の図を見てください。ANAとJALの売上高を比較したものになります。
総じて、ANAの方が売上高は高いようですね。ANAは売上高を伸ばしています。近年国際線に力を入れている影響が出ているのですかね。
一方、JALはあまり売上高は伸びていません。
次に、各社の営業利益を見てみましょう。
営業利益の推移
営業利益においては、総じてJALの方が高くなっていますね。しかし、JALの成長は安定的ではありません。一方、ANAは2015年あたりから、営業利益を安定的に成長させています。ANAがJALを営業利益で超えるのも時間の問題ではないでしょうか。
営業利益率の推移
営業利益率を見てみます。
営業利益率は、圧倒的にJALの方が高いですね。JALの方が収益性が高いと言うことができます。
財務基盤の違い
では、次に財務基盤の違いを見ていきましょう。
JALの貸借対照表
JALのH30年の貸借対照表です。固定資産が多いのは、主に航空機の影響です。自己資本比率を計算してみると、59%となりました。とても安全な数字です。
ANAの貸借対照表を見てみましょう。
ANAの貸借対照表
ANAも固定資産が多いですね。資産の規模を見てみると、2兆5619憶円になりました。自己資本比率は39%です。心配はないと思いますが、少し低くなりましたね。
貸借対照表を比較して
以上のデータを比較してみると、売上高、資産の規模で見た場合、ANAの方が断然規模が大きいことがわかりますね。しかし、利益や安全性の観点からするとJALの方が勝っていると言うことができます。
事業の違い
では、それぞれがどのような事業を持っているのかを見ていきましょう。
JALの持つ事業
JALは、以下の事業を持ちます。
- 航空運輸事業
- 空港旅客サービス:搭乗手続きや案内業務など
- グランドハンドリング:手荷物や貨物の搭載、航空機の誘導、機内のクリーニングなど
- 整備:航空機やその部品の整備
- 貨物:貨物や郵便の取り扱い
- 旅客販売:電話での予約や案内など
です。人数の内訳は以下の通りです。
ANAの持つ事業
ANAは、以下の事業を持ちます。
- 航空事業
- 航空関連事業:空港でのサービスや電話での予約や案内など
- 旅行事業:パッケージ旅行商品の企画、販売など
- 商社事業:航空関連資材の輸出や販売など
人数の内訳は以下の通りです。
事業の違いから分かること
以上の事業の違いを見てみると、
JALはほとんどの事業が航空業であるのに対して、ANAは航空事業以外の商社事業や旅行事業にも手を出していることがわかりますね。
仕事内容は??
以上のように、細かい事業の名前は変わってきますが、航空業界は、大きく分けると「運航」「整備」「運送」「管理」の4つに分類されます。
それぞれの仕事内容を見ていきましょう。
運航…「パイロット」はここに分類されます。乗客を安全に目的地に届ける重要な役割ですね。
整備…「航空整備士」はここに分類されます。飛行機の整備を行います。
運送…「客室乗務員」は個々に分類されます。乗客に対するサービス全般を担当します。
管理…社内体制を整える経営部の役割です。
給料の違い
では、最後に就活生が一番気になるであろう給料の違いを見ていきましょう。
有価証券報告書の数字から、平均年齢、平均年収を基に計算しました。各年齢ごとの年収です。
年齢 | ANA | JAL |
25 | ¥5,700,000 | ¥5,642,000 |
30 | ¥6,405,000 | ¥6,341,000 |
35 | ¥7,065,000 | ¥6,994,000 |
40 | ¥7,469,000 | ¥7,393,000 |
45 | ¥7,742,000 | ¥7,664,000 |
50 | ¥8,129,000 | ¥8,047,000 |
全年齢層で、ANAがJALを上回っていますね。ただ、これ以外にも役員報酬やボーナスなど、様々な要因があるので一概にANAの方が年収が高いということはできませんので、悪しからず。
年収の水準は意外と低いのかもしれません。LCCの登場で経営が困難になっているのでしょうか。
今後の課題/まとめ
以上でANAとJALの違いを終わります。様々な指標で見てきましたが、どちらが「良い企業」なのか、決着はつきましたか?
これは人によって見るところは違うべきであると思うので、あえてここでは言及しません。
そして、両社に共通して言えることですが、これからの課題はLCC(格安航空会社)とどう戦っていくかになるでしょう。
これからの動向が楽しみですね。
では、また次の投稿も楽しみにしていてください。
P.S.
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