「お家騒動から3年」大塚家具の新たな経営は成功しているのか?

経営の分析

 

 

今回は「大塚家具」の経営について考えていきましょう。

大塚家具と言えば、経営方針をめぐって創業者である大塚勝久氏その娘の久美子氏が長い間激しい争いを繰り返していましたね。

その争いの勝者は娘の久美子氏。2015年の株主総会で経営権を奪還しました。

娘の久美子氏による経営が始まって早3年。2018年8月14日(記事を書いている今からすると昨日)に、2018年12月期の第二四半期決算が発表されました。

その結果は経常損益34.7億円の赤字。これを見て、気にならずにはいられませんでした。

娘の久美子氏の経営の下で、大塚家具は事業の再建を図ることはできるのでしょうか。経営を分析していきましょう。

お家騒動では何があったの?経営方針の違いとは?

まず、久美子氏の経営方針を確認するために、お家騒動では何があったのかを見ていきましょう。

父であり創業者である大塚勝久氏は、一代にして会員制を軸にした富裕層向けのビジネスモデルを確立しました。

1対1の接客などに定評があり、上場企業になるまで急成長を遂げました。「ニトリ」や「IKEA」とは違った土俵で戦ってきたのです。

そして2009年の株主総会。勝久氏は会長に退き、娘の久美子氏が社長に就くことが決まります。ここから大塚家具の転機が始まるのです。

娘の久美子氏は、顧客層をより一般層にターゲットしていこうということで、大塚家具の基軸であった会員制、1対1の接客をやめます。カジュアル路線に舵を切ったのです。

これに反発をした勝久氏は、久美子氏を解任し再び社長の座につきます。

しかし、業績はどうしても伸びません。何度か社長の座は二人の間で入れ替わり、最終的に2015年の株主総会、久美子氏が経営権を奪還しました。父の勝久氏は、会社を去ることになったのです。

この争いは「経営方針の違い」と言われていますが、家族の絆にも大きな溝を残すことになりました。

久美子氏による大塚家具の新たな経営方針とは?

では、具体的に久美子氏の新たな経営方針を見ていきましょう。

久美子氏は、「一人ひとりにとっての上質な暮らしを提供する」こと変わらぬミッションとして掲げています。

では、何が変わるのでしょう。具体的には以下の4点です。

  • 顔の見える専門店・小型店による多店舗展開
  • プロフェッショナルによる提案サービスを前面に
  • 商品とサービスのオムニチャネル化
  • 購入だけではない、新しい選択肢のご提供

大塚家具経営ビジョン発表から抜粋

つまり、巷で騒がれているように「低価格路線」を進めるわけではないのです。高級品はそのまま取り扱い会員制をやめることで顧客層を増やしたのです。さらに、1対1の接客も前面に押し出すようです。

大塚家具の新しいビジネスモデルを図解したものが下の図になります。

変化する消費者のニーズ

家具業界の消費者ニーズは、年々変わりつつあります。大塚家具がメインターゲットとしてきた富裕層は相対的に少なくなっています。さらに、Eコマースなどの影響で家具屋で「まとめ買い」をする需要も小さくなり、今の主流は「単品買い」です。商品が店舗に揃っている必要がないのです。

これらの変化を受けて、家具業界では専門店・小型店の増加、インターネットによる集客などが重要課題になっているのです。

久美子氏は、これを見抜いて専門店・小型店の増加オムニチャネルによる集客、さらに大塚家具の築いてきたプロフェッショナルによる接客などを盛り込みました。

どのビジネスモデルが良いのかは結果を見て判断するしかないのですが、

新たな経営方針は消費者のニーズの変化に対応しており、ビジネスモデル的にはとても理想的なモデルではあると思います。

経営方針の転換は大塚家具の業績を上げているのか?

では、実際に久美子氏が経営権を握ってから業績はどのように変化しているのでしょうか。大塚家具の業績の推移を見ていきましょう。

2010年から2017年の業績の推移です。

2010年から2015年までは横ばいといった感じですね。しかしそれ以降、つまり久美子氏が経営権を奪還した以降は、業績は回復どころかどんどんと落ち込んでいます

2期連続で赤字を経験してしまいました。

このままでは、事業の継続は難しいでしょう。

大塚家具の新たな経営方針は失敗か?

では、久美子氏が提案した新たなビジネスモデルが失敗だったということでしょうか。

大塚家具の失敗は、お家騒動を大きくしすぎたことです。お家騒動は連日ワイドショーで取り上げられ、芸能人による「低価格路線へのシフト」や「接客をやめた」などの事実とは違った意見が飛び交いました。

「会員制」を撤廃したことから広がったこの誤解は、消費者の中に根付いてしまったのです。この誤解を撤廃するのには長い時間がかかるでしょう。

大塚家具は、ニトリやIKEAなどの「一般大衆に向けた安い家具」との差別化を図り、得意な接客を生かしてより個人個人に向けた商品を開発していくことが生存への道でしょう。

これから大塚家具はどのような道をたどっていくのか、目を離すことのできない企業です。

また新たな情報がありましたら記事にしたいと思います。

では、また次の投稿も楽しみにしていてください。

参考サイト・参考資料

大塚家具経営ビジョン発表大塚家具有価証券報告書

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